宗派

日本には様々な宗派があり、天台宗は隋の時代に中国浙江省天台県で天台大師智顗(ちぎ)が開いた仏教の宗派で、平安時代に最澄が唐より持ち帰り日本に広めました。
今回の記事では、天台宗についてご紹介致します。

天台宗とは

教え

天台宗とは中国を発祥とする大乗仏教の宗派の一つです。元々の中国の天台宗の開祖は中国の「智顗(ちぎ)」という人だと言われています。中国の天台山という山に登って修行し教えを確立した為、智顗のことを天台大師と呼びまたその教えを「天台宗」というようになりました。日本で天台宗を開いたのは平安時代の「最澄(さいちょう)」という人物です。最澄は平安時代の僧で、中国で天台宗を学びそれを日本に伝えたことなどから伝教大師として広く知られています。天台宗の総本山は滋賀県大津市坂本本町にあり、標高848mの比叡山全域を境内とする寺院「比叡山延暦寺」です。最澄や弟子の円仁によって天台宗が確立し、平安末期から鎌倉時代はじめにかけては各宗派の開祖たちが比叡山で学び日本仏教を発展させました。その後、足利義教や織田信長により本山の比叡山延暦寺が度々制圧されたり焼き討ちに遭うなどもしましたが、徳川家康の側近である天海が天台宗の僧であることから江戸時代には勢いを盛り返しました。今でも天台宗の寺院が関東地方に多いのは家康が信仰した宗派であることも関係していると言われています。天台宗では、仏の教えを「顕教」と「密教」に分けて考えています。顕教は「自身を救い他人を利する」という教えで、密教は「仏と自己の一体を観念し、仏の力で仏の境地に達する」という教えのことです。顕教や密教を元に3種類の儀礼が生まれました。まず「顕教法要」では法華経を唱え日々の懺悔をします。天台宗の教えでは全ての人がその身に仏性を宿しているとしており、この仏性を高めるために懺悔を行うのです。また「密教法要」では様々な印を結び、故人が極楽へと導かれることを祈念し真言を唱えて故人を供養します。そして「例時作法」ではお経を唱え「極楽の如く現世も素晴らしい世界に変える」という願いも込め死後極楽へ行けることを祈願します。

天台宗の教えや特徴

仏教

天台宗では、万民すべてが仏になることができる法華一乗の教えを説いています。「乗」とは乗り物のことを指し、身分に関係なく死んだ者は一つの乗り物で仏の世界へ導かれるということを表しています。最澄は天台教学に加え、教えが共通する「密・禅・戒」の三宗も日本に広めました。これにより天台宗は総合仏教として確立され、法然・親鸞・日蓮など各宗派の宗祖たちが天台宗を学んだことから仏教の母山とも呼ばれています。天台宗宗憲には「天台宗は宗祖大師立教開示の本義に基づいて円教・密教禅法・戒法・念仏等いずれも法華一乗の教意をもって融合しこれを実践する」とあります。この様に様々な教えを融合する天台宗は、ご本尊も寺院によって様々であるのが特徴で「釈迦如来・大日如来・阿弥陀如来・薬師如来など」が祀られています。その他の特徴についても下記にまとめましたのでご覧ください。

読まれる経典
「妙法蓮華経」が根本の聖典とされている
その中でも「自我偈」「観音経」「般若心経」が用いられる
「大日経」「金剛経」「蘇悉地経」「梵網菩薩戒経」
お唱えする念仏
正式には「南無宗祖根本伝教大師福聚金剛」
実際は「南無阿弥陀仏」を唱えることが多い
数珠のかけ方
親珠と房が下に来るように両手の人差し指と中指の間に数珠をかけ房はそのまま下に垂らします。
焼香のあげ方
使用する線香の本数は1本もしくは3本です。
焼香では合唱礼拝し、右手の中指・人差し指・親指で香を取り
右手に左手を添えて額にいただき焼香します。
香を取る動作を3回繰り返した後、再度合唱礼拝を行います。
※焼香の回数を明確にはしていないので1回だけの場合もある
天台宗の行事
修正会
涅槃会
花祭り・潅仏会
山家会
成道会
霜月会
大般若転読会
仏壇の飾り方
ご本尊は久遠実成無作の本仏である釈迦如来
阿弥陀如来をまつることも多い
薬師如来、観世音菩薩、不動明王、毘沙門天などをまつる場合も
右に「高祖天台大師」を
左に「伝教大師最澄」のご影像を飾ります。

ご本尊についてはこちらで分かりやすくご紹介しておりますので併せて参考にしてください。

葬儀の特徴

葬儀

天台宗の葬儀は、顕教法要・例時作法・密教法要の3つの儀式によって執り行われます。

法華懺法
法華懺法とは、天台宗の根本経本である「法華経」を読むことで自らの罪を懺悔します。ここでいう罪とはすべての存在は平等だという根本的な理念に反した行動や考えのことです。こうした罪を犯すのは私たちの心の中に煩悩があるからで、この煩悩により本来あった仏となれるはずの仏性が隠されています。法華懺法により自分の罪を懺悔すればこの仏性が自覚されます。
例時作法
例時作法では、南無阿弥陀仏と念仏を唱えて、仏様のいる極楽浄土で往生することを願います。また同時に、現世も極楽浄土のような素晴らしい世界になることも願われています。
密教
密教法要のなかで最も親しまれているのが光明供であり、葬儀でもまず光明供が執り行われて葬送の儀へと移ります。光明供では光明真言を念誦して、故人が極楽浄土へと導かれることを祈ります。